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2005年10月 8日 (土)

江戸ゴス

東海道四谷怪談を読み終えました。


江戸時代の戯曲なんて読みなれているはずもなく、ちょっと努力が要りました。
いろいろ重なって、たまたま自分の中で読みたい欲が高まったから、かなあ。


これには伏線があります。

まず、平田オリザさんの「忠臣蔵」と出会いました。

平田版忠臣蔵は、主君が切腹した知らせが入るところから始まり、「討ち入り」に行こうか、とみんなが合意するところで終わります。
ですから、映画なんかで取り上げられる「松の廊下」「討ち入り」などの派手なシーンは一切ありません。
家臣たちが、「困ったなあ」「どうするよ」、「君んちはいいけど、うちは息子小さいしねえ」、、、、、、、と、現代語で延々会議を繰り広げるだけの戯曲なのです。
でも、そうしたグダグダな会議を続けていくうちに、場の雰囲気が盛り上がってしまい、なんとなく討ち入りすることになってしまう。

これだけのパーツで戯曲として成立させてしまう平田さんの腕力は凄い、、、、。
「だらだら会議」、という日本的な決定システムの不思議さを感じる作品でした。


そうこうするうち、小林信彦さんの「裏表忠臣蔵」をブックオフで発見。
悪役の吉良は実はいい人、とか、内蔵助は部下の熱狂に「巻き込まれて」討ち入りの首謀者にされた、とか。
小林さんは、「第二次世界大戦に日本が踏み込んでしまった理由は何か」、という裏テーマを持っておられるので、視点のずらし方が平田さんとは違います。
が、忠臣蔵は日本社会の縮図である、というお話は共通しています。


で、さらにそうこうするうち、深作欣二監督の「忠臣蔵外伝 四谷怪談」の映画を雑誌かなんかで知ります。
(実はこの映画、いまだ見ていないのですが。)
このタイトルを見たとき、「そういえば四谷怪談の初演って、2日かけて、何幕かずつ忠臣蔵と交互に上演されたんだよな」、と思い出しました。

忠義=明の世界の「忠臣蔵」と、ピカレスクロマン(悪漢小説)の「四谷怪談」。
この両極が同時に進行するのがおもしろいんだと、誰か(多分、橋本治さん)が書いていたのを思い出したのです。

さらには、京極夏彦さんが「嗤う伊右衛門 」で四谷怪談を純愛物語としてひっくり返します。これは、堪能しました。

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、


という、長い長い前振りを経て、そういえば、原作って読んだことないなあ、と思い至り、挑戦してみたというわけです。

岩波文庫は、注がちょっと不親切で、ストーリーを理解するうえで大事な注のほかにも、何バージョンかある脚本のバージョン違いがやたら詳しかったりするので、読むとかえって混乱する注もあります。
正直、かなり骨が折れました。
最初の20ページぐらいは2,3回読み直しました。
あと、あらすじもネットで調べたなあ。

でも、そうやって慣れてくると、戯曲を読むのがいきなりおもしろくなってきたのです。


「両窓おろし」ってなんだかわかりますか?

岩波文庫の注によると、
「両窓おろし=客席二階、東西両桟敷の上部にある明り取りの窓。両方にあるから両窓という。それをしめて暗くする。幼稚な照明装置である」

ライトがない時代、暗転はこうやっていたんですね。

変な注もありますよ。
「月三両の三月しばり=毎月三両で三ヶ月間を約束した妾。今でいうオンリー」

・・・オンリーって、死語ですよね。ちなみに、注で言う「今」ってのは昭和31年のことですが。

そして、その後図書館に行って読んだのがこの本。
「歌舞伎大道具師」著者: 釘町 久磨次

これを読むと、四谷怪談ってのは、遊園地の出し物よろしく、ものすごく視覚的エンターテイメントがあったことがわかります。

仏壇からお岩さんが出てきて、恨みのある男を仏壇へ引っ張るとあっというまに消えてしまうシーン。
(仏壇返し、というそうです。)
殺され、戸板に打ち付けられたお岩さんが現れ、恨みを言って戸板がひっくりかえると、裏には小仏小平がうちつけられている。しかも、このお岩さんと小平は一人二役なのです。そして、最後にどくろになってばらばらに落ちる、、、(戸板返し)

戯曲を読むだけではどうなっているのかわからないこの仕組みが、図も交えてわかりやすく解説されています。
申し訳ないのですが、図がないとわかりづらいので、この仕掛けは読んでのお楽しみということにさせてください。


とまあ、いろいろディテールも楽しいのですが、やっぱりイエモンですね。

冒頭から凄惨な殺し。
そして、殺し方も油断させて後ろからとか、卑怯なんですよ。

これほど悪いやつが登場し、そして破滅していくのって、ものすごくカタルシスがあるんです。

あ、そうそう、タイトルの「江戸ゴス」。

江戸時代のゴシック小説は、歌舞伎にあった、って感じでつけて見ました。

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