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2006年1月 1日 (日)

運転中号泣(危ないって!)

明けましておめでとうございます。

車を運転中、何気なしに昔のMDをかけたら、これが入っていました。

『ハイヌミカゼ』より「ワダツミの木」/元ちとせ

虚を突かれて、思わず涙が滲んでしまいました。


レゲエのリズムに紐解かれるは、悲恋の物語。

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赤く錆びた月の夜に
小さな舟をうかべましょう
うすい透明な風は
二人を遠く遠くに流しました

どこまでもまっすぐに進んで
同じ所をぐるぐる廻って

星もない暗闇で
さまよう二人がうたう歌
波よ、もし、聞こえるなら
少し、今声をひそめて
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お話は、若い男女が、海へ舟を漕ぎ出すところから始まります。
どこを目指すのか、何から逃れるのかわかりません。
禁じられた恋だったのかもしれませんが、それは歌からは読み取れません。

やがて、闇夜、波が高まったころ、少女は波に連れ去られます。
少女は海に沈んでゆきました。


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私の足が海の底を捉えて砂にふれたころ
長い髪は枝となって
やがて大きな花をつけました

ここにいるよ、あなたが迷わぬように
ここにいるよ、あなたが探さぬよう

星に花は照らされて
伸びゆく木は水の上
波よ、もし、聞こえるなら
少し、今声をひそめて

優しく揺れた水面に
映る赤い花の島
波よ、もし、聞こえるなら
少し、今声をひそめて
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砂に根を下ろし、水の上に伸びて赤い花をつける木とは、マングローブのことでしょう。
生き残った少年のために、少女はマングローブに生まれ変わったのです。

星に照らされて伸びる枝。
やがて島を覆い尽くす赤い花の木。

例えばツタ植物のように、強い生命力を持つものに感じる畏れと尊敬の入り混じった気持ち。
とても「オーガニック」な、思いの強さを感じる曲です。

ワダツミとは、記紀に登場する、日本神話の海の神様のことだそうです。
つまり、タイトルは、「海の神の木」、なんですね。


もう、3,4年前のヒット曲です。

驚いたのは、なんと作者が上田現だったことでした。
上田現さんは、レピッシュというバンドでキーボードを弾いていた人。メンバーそれぞれが曲が作れ、歌えるという才能あふれるバンドだったため、上田さんの作品はアルバムにそう何曲も入っていなかったのですが、レピッシュの曲で好きなものはほとんどが上田さんの曲でした。


私は初めはラジオで聞き、意味もわからぬながらたいへんな衝撃を受け、すぐにCDを手に入れました。
最初は、その神話的な雰囲気と、元ちとせさんの声の魅力が大きかったと思います。

そして、歌詞を読んで、さらに衝撃を受けたのです。こんな歌詞が歌謡曲・Jポップの中で普通に流通し、みんなが聞くものだなんて、、、、という驚きです。
しかも、これがメジャーデビュー曲。プロデューサーの勇気に感銘します。


今、気になってマングローブにそういう伝説があるか、ネットでみてみたのですが、どうやらなさそうですね。
沖縄を旅した上田さんの頭にだけ宿った伝説なのでしょう。こんなストーリーを呼び寄せてしまうところが、いかにも上田さんらしいです。

それにしても、ものすごいポテンシャルを秘めた物語です。すごく普遍性があるし、本当に沖縄で神話として言い伝えられていてもおかしくないお話だと思います。


そして、レゲエも、この曲の大事な要素。思い出したのはこれです。

日本のレゲエ・ダブの草分け的なバンド、ミュー・トビート。

リーダーの小玉和文さん(トランペット)のインタビューで、
「ライブのとき、ドラムのハイハットの音だけを永遠に聞いていられる、と思う瞬間があるんだよ。そんなときは、ステージに立ち尽くして、ただ幸せに包まれて耳を澄ましている」
というようなことを話していたのを思い出しました。

ダブとは、あるときはベースのボリュームだけを上げてほかの楽器を絞ってしまったり、あるときはものすごいエコーをドラムにかけたり、、、、と、録音のミキシングで曲をまったく違うもののように作り直すことを言います。
ミュート・ビートは、本来スタジオで作るものだったダブをライブでやっちゃうという、ものすごいバンドだったわけですが、、、。

「ワダツミの木」に幻惑される要素の何割かは、たぶんレゲエという要素です。「ワダツミの木」ダブバージョン、あれば聞いてみたいし、機会があれば作ってみたいです。


ちなみに、先ほどのMDですが、「ワダツミの木」の次の曲はこれが入っていました。

「ハーメルン」/レピッシュ
(メイク、というアルバムがオリジナルです)

ハーメルンの笛吹きに、
「 ダンスはヘタだよ でも懸命に踊るよ
ねえ あのステップを 教えてよ」
と、ハーメルンの笛吹きに憧れて町を出てゆこうとする少年のお話です。

これも、ミュート・ビートを思わせる、ディープなレゲエに乗せたメランコリックな曲想。上田節全開の傑作です。


上記、神様のお話ではありますが、正月にふさわしい話かなあ、、、、。
まあ、ネタのある限り、ボチボチのペースで、今年も書き続けていければいいなあと思います。


ということで、今年もよろしくお願いします。

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