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2008年6月 8日 (日)

「Cocoo(虚空)」に捧ぐ

私がとても好きだった店が閉店しました。もうないお店なので、実名でいきます。
Cocooと書いて「コクー」。
かわいらしい店名だなあ、と思っていたら、実は

「大学で仏教哲学を専攻していたもので、「虚空」という名前にしたかったんですが、なんか硬いんで、COCOOにしました。」
「よく、「コッコ」と間違われるんですよ。でも、コクーです。」
と、若いマスターに教わりました。

なんて話を受けて、私も学生時代仏教哲学をひとコマとったことを思い出しました。(ひとコマだけですが。)
龍樹(ナーガルジュナ)の著作『中論』では、この世の全てには実体がなく、虚空である、という論が展開されていました。
その時の授業は今思ってもユニークなもので、授業の一番最後のリポートは、龍樹の『中論』とミヒャエル・エンデの『モモ』について述べよ、でした。
エンデは東洋思想に深く影響された、というか、着想も含めてかなり根底に東洋思想があった人でしたから、あながち見当はずれとは言えません。

話がかなりそれましたが、そのお店がやたら真っ暗なのです。
明かりは、(たぶん調光機で絞った)裸電球一個。これではメニューも読めないので、グループに一個ずつ小さなキャンドルが付けられます。
手作りのスピーカーから、昔のソウルミュージックや宗教音楽などが、独自の耳で選ばれていました。ここで教えてもらって、愛聴盤になっているものもあります。
たとえば、



JAZZMANというレーベルから出ているコンピ、"What is Wrong With Groovin'"。ドーナツ盤のレア曲をとても丁寧に発掘していて、どのCDも最高なのですが、特にこのアルバムは、ギターやドラムのエコーの感じがとっても「音響」的で、大音量、いい音で聞くと最高です。

あと、オノセイゲンの「サイデラ」レーベルのアルバムもよくかかっていました。要するに、とても音に集中できる環境のお店だったのです。

そういうわけで、私も、このお店に何枚かアルバムの紹介をしました。たとえばこれ。


Dead Can Dance "Toward the Within"

おっ、アマゾンで調べたら、今年の7月に紙ジャケットで再発されるようです。紙ジャケットはなんとなく好きになれないのですが、それはそれとして、また注目を集めるタイミングなのかもしれませんね。
これは、4ADというイギリスのレーベルからのアルバム。80年代中盤から、コクトー・ツインズなど、耽美的(いまやちょっと恥ずかしい誉め言葉ですが)なアルバムを数多くリリースし、ある時代を作ったレーベルです。(これは90年代中期のアルバムですが。)
この「デッド・カン・ダンス」(バンド名は、「死者も踊れる」、という感じなのでしょうか?)にけっこうはまっていました。いわゆる耽美だけではなくて、ケルトやペルシャなどの民族音楽のエッセンスを、メロディー、楽器、歌唱法(ヨーデルみたいな歌い方まで、、、、)もろもろに取り入れていて、かなりプログレっぽいところもあります。
でもそんな理屈をこねずとも、端的に「かっこいい!」と思える、おすすめのアルバムです。静かなところも多いですが、強烈な盛り上がりもやってきます。

さて、
このアルバムには「ペルシャン・ラブ・ソング(Persian Love Song)」という曲があります。おそらく、題名どおり、ペルシャのラブソングのカバーなのだと思いますが、そこから、こんどはこのアルバムを連想しました。
David sylvian "Brilliant Trees"

この3曲目の"Nostalgia"のイントロが、Dead Can Danceの上記のアルバムのなかの一曲、"Persian Love Song"と全く同じメロディーを使っています。節回しも同じなので、どちらかがどちらかをサンプリングしているのか、それとも共通のサンプルソースを使っているのかもしれません。
このアルバム、よく癒し系とか言われますが、そして、まあ実際そういう聞かれ方もできますが、内に込められたオーガニックな力に圧倒されるアルバムです。
たとえば。
木が静かに静かに枝を広げて行くときは、激しく自己主張することもないので、一見物静かで恐ろしくもなんともないように見えます。が、ひとたびそれを止めようと思うと、その力の巨大さに圧倒されるでしょう。誰もそれを抑えることはできない、、、、。オーガニックな力といったのは、そんな、恐ろしさを秘めているアルバムだからです。


そして、最後の連想、これは単純にタイトルからの連想ですが、Cocooのマスターには、"Persian Love"という名曲が入ったこのアルバムも勧めたことがありました。
Holger Czukay "Movies"

ホルガー・シューカイ(チューカイ)は、カンという伝説のロックバンドのベーシスト。
このアルバムでは、短波ラジオのテープコラージュと一緒に演奏するというかなり実験的なことをしていますが、「ペルシアン・ラブ」はとてもポップでせつない名曲。
むかし、ヤン富田さんのライヴで、生で短波ラジオをかけて演奏していた、とか、コーネリアスのライブでオンエア中のテレビの映像を使ってVJをしていた、なんて話の根っこには、このアルバムがあるのかもしれません。

ラジオとの競演ということで、「即興性」も問われるのでしょうが、聞いていると、それよりも、海の向こうで流されている曲と一緒に音楽をやっているという「同時性」がより強く心に残ります。この「ペルシアン・ラブ」の切なさは、そんなところからきているのかもしれません。


Cocooのマスターは、親の介護のためにいったん田舎へ帰るとのこと。
またいつか、あの空間で、音楽を聴いてみたい、です。それまでお元気で。

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