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2010年12月23日 (木)

ノルウェイの海

先日来、映画『ノルウェイの森』の、あるシーンをくりかえし反芻しています。
それは、直子が自死したあと、ワタナベが海辺で泣くシーン。

原作でも、日本海側をわずかな荷物を持って旅して、海辺で泣くシーンはあったかな。確か、あまりにひどい姿に漁師に同情された、というエピソードだったような気がする。でも、それはミドリとの会話の中でちらりと出てくるだけで、あそこまでリアルに泣いている描写はなかった、と思います。
身も世もなく、という言い回しがあるけれど、ほんとうにその表現がぴったりするほど泣いているワタナベ。これこそ、映画にしか描けないシーンだと思います。

ワタナベの涙とヨダレが一つの筋になって、日本海の風に吹かれる。それは、流れ落ちることなく、いつまでも風の中でブラブラ揺れ続ける。

背景にはインスタントラーメン(?)の食べたあとがあったりして、それがまた哀しい。人は、大事な人を亡くしてもお腹が空く、という単純すぎる事実。泣いて、泣いて、泣いて、でも、いつか泣き止むことが出来るのは、、、、一つの希望のありよう、というしかない気がします。
希望と絶望が等価な、感情の彼岸。そこには、いきものの哀しさがあります。

直子の象徴する幻想的な世界と、ミドリの象徴する現実の世界。その二つの間で分裂しながら生きてきたワタナベが、「やっぱりお腹は減る」「やっぱり性欲はある」という事実をテコに、現実に戻ってくる、、、、なんだか、とても哀しいんだけど、それはとてもうなづけるのです。

現実に戻ってきて、せっかくのミドリとの電話にもぼーっとして「僕は今どこにいるんだろう」とボケをかますワタナベだけど、願わくば、次にミドリと会った時には、とても激しくて気持ちのいいセックスをしてほしいなあ。

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