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2010年12月13日 (月)

深い森の奥から~映画『ノルウェイの森』からの帰還~

今日、映画『ノルウェイの森』を見てきました。

見終わったいま、とても、感情的に動揺しています。なので、見てきたばかりのこのタイミングで何が書けるのかという気もするのですが、書かずにいられないというところもあり、蛮勇をふるって「みみをすます」を書き始めてみます。


なんか、とてもフィジカルな映画、というのが最初の印象でした。うーん、この言い方、正確なのかなあ。。。。。

小説の『ノルウェイの森』になじんできた私からすると、とても困惑したことは確かです。たとえば、セックスの描写ひとつとっても、(小説と同じ状況にもかかわらず)生身の役者さんが演じている分、そこには確かな肉体性というものが宿ってしまう。映像だと、セックスのシーンでこんな声を出して、こんなふうに身体を反らし、こんなふうに眉をひそめるんだ、という、とても具体的なものが見えてしまうので、すごく自分から離れた光景に見えてしまうのです。
それは、背景となった学生運動で荒れる大学とか、お誕生日ケーキのおいしくなさとか、いろいろな場面でで同じ感想を持ったのですが、、、、、、、
それぞれの光景は(当然ながら)私が経験してきた大学や、セックスや、お誕生日ケーキとは違うわけで、小説を読んでいる時に感じていたリアルさとは、絶対的な距離感があるのです。
平たく言えば、活字を追っていたときは、まさに自分の恋愛の変奏曲のように感じられていた親密さが、映画となってしまうと、明らかに別の誰かの物語として見えてしまうわけです。


私には、直子は骨太すぎるように見えたし、緑は繊細すぎるように見えました。配役が逆でも成立するよな、みたいな。

要するに、映画での二人は交換可能な感じなんですね。立場がちょっと違えば、二人は逆でもありえたような。
でも、小説の『ノルウェイの森』のリアリティはそういうところになくて、直子は不安定な気持ちの中でしか生きられなかったし(死ねなかったし)、緑は、真っすぐ、時にうっとおしがられながらもワタナベを愛さざるを得なかった。それぞれが、別な意味で押し付けがましいキャラを持っている。そういう意味では、二人ともめんどくさいキャラなのです。
その二人の間の溝こそが、小説の読みどころだと思うのだけれど、映画では、そうでもなかったですね。特に、緑と向き合うときのめんどくささ(と、それゆえのいとおしさ)がちゃんと描かれていない気がしました。

余談ですが。
やっぱり菊地凛子さんについて考えざるをえないなあ。精神的に不安定な人を演じるのって、女優のひとつの典型だと思うのですよ。アカデミー賞に近づけるというか。直子みたいな役を、菊地さんが自ら手を上げてやりたいといってしまうのは、すごくよくわかる。そして、その役作りに全精力を傾けたい気持ちも、彼女の中での必然性も、、、、、菊地さん自身の性向も含めて、分からないではない。
でも、やっぱり私は、そういう菊地さんに違和感を持ち続けるんだろうなあ。

ああ、いまなんとなく分かりました。小説の中の直子は、「直子を通じて自分のある部分を見せたい」みたいな女優の性(さが)とは無縁だし、そもそもそういうギラギラした感じとはすごく離れたところにいるわけです。そういうのを、画面は正直に映し出してしまいますからね。とはいえ、菊地さん以外に直子が演じられたかというと、またそれは難しいところなんですが。

強引にまとめると
、、、、、、、、、、
女優さんがみんなミスキャスト、ということになるんでしょうか。

でも、一方では、緑を演じた女優さん、大好きでもある。
小説で描かれたような、生と死に見事に対応するような緑と直子ではなく、どちらも似たところを持って、でも魅力的な緑と直子、その二人の間で揺れるほうが、多くの人(私も含む)にとってはリアルな物語ではあるのかもしれません。

最後に、音楽。
映画では、Canの名曲てんこ盛り。 "She Brings The Rain"など、なつかしい曲が、きちんと場面に呼応されて流れています。当時、本当にCanを聞いていたひとがどれぐらいいるのかわかりませんが、抽象的に70年代初期を象徴する音楽だと思います。

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