アート

2008年7月 4日 (金)

バブリー!(または、サービス業としての美術館)

森美術館に行ってきました。

ターナー賞受賞者の展覧会です。美術館的には、デミアン・ハーストの、例の「牛」が展示の目玉だったようでした。
デミアンの作品は、二つに切断したホルマリン漬けの牛を展示するというショッキングなものです。ヨーロッパにはもともと、絵画の中に髑髏を描いて、メメントモリ(死を想え)と称してきた伝統もあるわけで、そういう意味ではこの作品はヨーロッパデカダンスの正当な流れを継承しているとも言えるかもしれません。
二つに割られた牛の間を通れるというギミックもあって、これは「死の影の谷」かな?死の影の谷を歩むとも、我恐れず、って、聖書にありましたね。

でもなあ。

いや、デミアンの作品自体はすごいと思うのですが、あまりにもリクツにかないすぎているところが気に入らなかったりするのです。(デミアンの最近の有名作、本物の頭蓋骨から型を起こし、それにダイヤをびっしり貼り付けたピカピカドクロは残念ながら展示されていませんでしたが、これも、超わかりやすいメメント・モリですよね。)

これは余談ですが、この作品を日本に持ち込むということは、牛の死体を搬入する事になるわけで、検疫で大変だったというエピソードもよく自慢げに語られます。が、これはいい宣伝になるぞ、というバブリーな計算の匂いがプンプンで、好きになれません。
私見ですが、ターナー賞の受賞ポイントは、作品自体の強さよりも、コンセプトの強度によるようです。毎年テレビに授賞式が紹介されるというのも、コンセプト重視の傾向をあおっているんでしょうね。作品の強さもさることながら、やはりコンセプトの強さに脳がぴくぴくする展覧会でした。

さて、それはさておき。
あまりこんなことを言っている人もいないでしょうが、森美術館の特徴は、展示作品が少ないことに尽きます。

これは、悪い意味で「電通的」なことなのですが、この美術展に来た客は、作品数に圧倒されることもなく、それぞれの意味づけも判りつつ、後でみんなに自慢しながら語れるという展示になっています。

・・・・・・・「見たよ、牛を二つに切ったやつ。なかなかの作品だったな。あれはね、現代的な「死を想え メメント・モリ」なんだよ。」・・・・

要するに、作品に圧倒されたり言葉を失うことは、「森美術館」ではありえない。1500円なりを払って、払ったぶんはキッチリ判る。そして、判ったことを誰かに(自慢げに)語れることで入場料分の満足を得るという展示なんですね。ちょっと意地悪な見方かな???誉め半分、けなし半分で「サービス業としての美術館」といえるでしょう。


で、いちばんのおすすめは、展示の「オマケ」的な位置づけの、サスキア・オルドウォーバースだったりします。(ターナー賞とは無関係なんですが、ターナー賞の入場チケットを買わないと見られません。)

これ、一見CGにも見えますが、実はミニチュアのセットを作り撮影したものだそうです。そう言われてもどうやって撮影したのか謎。でも、これは必見です。
森美術館では、ターナー賞の展示の流れで、タダで大スクリーンで見ることができます。と言いつつ、展示は7月13日まで。今さらすみませんが、急いで見てもらいたい展覧会です。

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